症例7解説
症例:30代・男性
臨床所見:他院にて甲状腺腫瘤の指摘を受け、精査目的で当院受診
採取部位:甲状腺穿刺吸引
解答:① 硝子化索状腫瘍
細胞所見
上皮性細胞が採取されている検体です。
上皮性細胞は核腫大、核内細胞質封入体を伴い、硝子物を囲んだ集塊として出現しています。細胞質は淡染性で、細胞境界は不明瞭です。以上より硝子化索状腫瘍と考えます。
硝子化索状腫瘍
索状増殖パターンと硝子化(基底膜物質の沈着)を特徴とする、非浸潤性の濾胞細胞性腫瘍。
診断のポイント
● 核内細胞質封入体、核溝が見られ、乳頭癌と誤認されやすい
● 腫瘍細胞が硝子物を取り囲むように出現する像が特徴
● 腫瘍細胞と硝子物の境界は不明瞭
● 腫瘍細胞は類円形〜紡錘形、細胞境界は極めて不明瞭
● 細胞質は淡染性
● すりガラス状核、核重畳はみられない
● 乳頭状、濾胞状、シート状配列はみられない
● 免疫染色Ki-67が細胞膜、および細胞質に異所性陽性局在を示す
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硝子化索状腫瘍
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乳頭癌
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出現様式
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硝子物を取り囲むように配列
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乳頭状、シート状、濾胞状
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核内細胞質封入体
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ほぼ全例に出現、出現数は多い
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70〜90%に出現、出現数少ない
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核クロマチン
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細顆粒状
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すりガラス状、微細顆粒状
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核溝
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少数
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頻繁
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細胞境界
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極めて不明瞭
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明瞭
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細胞質
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淡染性、細線維状
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ライトグリーン好性
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多核巨細胞、リンパ球、泡沫細胞
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なし
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しばしばあり
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細胞診ガイドライン3:甲状腺、内分泌、神経系;金原出版