症例8解説
症例:80代・女性
臨床所見:他院にて高尿酸結晶、高血圧症治療中、左下腹部に4cm弱の腫瘤を指摘されCT検査を施行。縦隔、腹部、左鼠径部多発リンパ節腫大が見つかり当院紹介受診。左鼠径部リンパ節生検を施行。
採取部位:左鼠径部リンパ節捺印
解答:③ ホジキンリンパ腫(結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫(NLPHL)
細胞所見
ホジキンリンパ腫の形態学的特徴は大型の特異細胞とその背景に炎症性細胞浸潤を認めることです。そしてホジキンリンパ腫は結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫(NLPHL)と古典的ホジキンリンパ腫(CHL)に分類されています。
本症例は結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫です。結節性の増生様式を示すことが多く、びまん性を主体とするものは少数です。小型リンパ球、濾胞樹状細胞、組織球を背景に、写真中央に見られるやや大型の細胞がlymphocyte
predominant(LP)細胞といわれる腫瘍細胞で、くびれや分葉状を呈する大型単核細胞が見られ、これはポップコーン細胞とも呼ばれます。一般的に古典的ホジキンリンパ腫で見られるReed-Sternberg
(RS) 細胞と比較して核小体が小さいことが特徴です。
特定診断は困難とされ、良悪を含めて鑑別として以下三つに大別されます。
1. progressive transformation of germinal center(PTGC)
反応性病変ですがホジキンリンパ腫への移行が知られ、NLPHLとPTGCの形態学的鑑別点はLP細胞の有無です。
2. T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫(THRBCL)
形態学的には類似しますが、THRBCLはDLBCLに類似し、多臓器への浸潤を特徴として、予後はNLPHLより不良を示します。
3. リンパ球豊富型古典的ホジキンリンパ腫
LP細胞とRS細胞の鑑別です。LP細胞は濾胞B細胞由来であり、CD20(+)、CD15(-)、CD30(-)、に対してRS細胞はCD20(-)、CD15(+)、CD30(+)、となります。
全ホジキンリンパ腫の5%を占める極めて稀な疾患ですが、予後良好なことが多く、臨床病理学的特徴は古典的ホジキンリンパ腫と異なるものとして認識されています。